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COLUMN コラム

2021.02.15

女性の働き方をデザインする
ー 後編 ー(全2回)
インテリアデザイナー
イガラシデザインスタジオ代表/武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科教授

五十嵐 久枝 氏

現在、労働人口の約45%は女性が占め、25歳から54歳までの女性就業率も70%に近づくなど、かつて男性中心だった職場に女性が参画するようになり、「働く」ということを再考するタイミングがきています。それは、効率を求めて働き、働く質を高めることでやりがいを感じ、豊かな働き方へのシフトに見られます。労働時間はライフシーンの多くを占めており、企業における「働き方」は雇用にも影響を及ぼすことから、オフィス環境は大きな変化の時期を迎えています。今回は働く女性の空間に焦点を当て、最近のデザインから「Peach John東京オフィス」を紹介します。

前編の記事はこちらからご覧いただけます。

地下階と1階を用途別に使い分け

結婚・出産・介護等、女性のライフイベントに対応し、フレックス出社や産休・育休・時短制度を導入することで、長く働き続けたい女性に応える会社運営を実施してきました。
新しいオフィスも働きやすさを重視し、2フロアのうち地下1階に個人とグループのワークスタイルを混在させることで、一つのオープンスペースに働く場を集約しています。地下とはいえ、植栽計画により明るいドライエリアがあるため、全く暗さを感じません。
ワークエリアも様々な空間を用意しました。細い柱で囲われたエリア、ロングテーブル、円形・台形・楕円テーブル、様々な形のテーブルや椅子を配置することで、その日の気分によって場所を変えられるようにしました。整然と並んだ席は少なくし、視線のズレを生じさせ、無機質と有機質の素材をミックスしたインテリアは柔らかさと硬さを程よく感じる空間にしました。一角にはカフェコミュニケーションスペースがあり、くつろぎながら仕事ができるようにしています。スタッフは一部の固定席を除きフリーアドレスのため好きな場所を選択できるようになっており、その中で部署を超えたコミュニケーションが活発化します。
また、1階は正面玄関とショールーム・接客室を直結させ、スタイリストや取引先への展示会を行うとともに、フラッグシップショップのようにお客様とのイベントも可能になっています。
奥にはランチや休憩時間を快適に過ごすためにキッチンコミュニケーションスペースを設けました。このスペースではいつでも食事・仕事に使用することができるので、忙しい時には時間を有効に使えます。自由に使える冷蔵庫やレンジも備え、アイランドキッチン周りにIHコンロやシンクも用意し、日常だけでなく展示会などのイベント時にも活用できます。長く過ごす場所であるからこそ、オフィスには生活に必要な設備を揃え、便利にすることも、働きやすさにつながると考えます。
オフィスは今、多様化の時代を迎えています。働き方に合わせた多様なワークスペースを用意することが、コミュニケーションを活発化させ、スタッフのモチベーションを支え、豊かなアイデアを生み、質の高い仕事につながることと思います。さらにいえば、仕事はライフスタイルの一部であり、個人のライフスタイルの充実を考えてこそ、会社という組織の充足が得られるのかもしれません。
デザインは常に、人々の生活のためにあります。デザイン思考が様々な分野で活かされ、人々が生きやすい社会が育まれていくことを期待しています。

インテリアデザイナー
イガラシデザインスタジオ代表
武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科教授
五十嵐 久枝
Igarashi Hisae

桑沢デザイン研究所インテリア・住宅研究科卒業。1986~91年クラマタデザイン事務所勤務。93年イガラシデザインスタジオ設立。幅広い領域で空間デザイン・インスタレーション・家具デザインに携わる。主な仕事に、TSUMORI CHISATO、武蔵野美術大学「ゼロスペース」、PEACH JOHN東京オフィスのインテリアデザイン、TANGO、baguette life、AWASE、AS YOU AREの家具デザインがある。